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2021.04.16 2021.05.24

閉店ラッシュが止まらない!?「いきなり!ステーキ」が赤字続きになっている理由

立ち食いステーキという新ジャンルでメディアからも脚光を浴びた「いきなり!ステーキ」。
2019年11月には489店舗ありましたが、その後216店舗にまで急激に店舗数を減らし、現在では企業存続の危機とまでいわれている状況です(2021年3月時点)。

従来にはないステーキ店としてあんなに人気を集めていたのに、業績が悪化した原因はどこにあったのでしょうか…。
この記事では、いきなりステーキが売り上げ不調に陥った原因とともに、いきなりステーキの事例から学べる飲食店経営の重要ポイントを紹介します。


そもそも「いきなり!ステーキ」とは?

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いきなり!ステーキは、飲食企業である株式会社ペッパーフードサービスが運営するステーキハウスチェーンであり、同社が展開する主力の事業です。

いきなり!ステーキが登場したのは2013年。
東京都中央区の銀座に1号店をオープンし、2014年に首都圏を中心に29店、翌2015年からは地方都市を中心に47店を出店し、その後もどんどん店舗展開を続けて2019年には500店舗に迫りました。

この急成長の背景にあるのは、「立ち食いステーキ」という斬新な営業スタイルに加え、大きなサイズの厚切りステーキを低価格で食べられるコスパの良さ、提供時間が5分程度というスピードの早さです。

「ステーキはディナータイムにゆっくり食べるもの」という当時の概念を打ち破り、ランチタイムでも気軽に高級な肉料理を食べられる仕組みは多くの人にウケました。

加えて当時は脂身の少ない赤身肉が健康に良いとする、空前の赤身肉ブームが起こっていたことも人気を押し上げた背景にあるでしょう。

こうして「いきなり!ステーキ」は今までの常識を覆して新たな食のスタイルを提案して巷で話題となり、短期間で凄まじいスピードで店舗展開を進めて成長をしていったのです。


人気だったのに、なぜ売り上げが不調になってしまったのか考察してみた

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しかし、従来にはない仕組みで飲食業界に新風を巻き起こした「いきなり!ステーキ」のブームは長くは続きませんでした。

創業から4年後の2017年下期を境に売上を大きく落としていき、2019年には売上こそ前年を上回ったものの、利益額は大幅に落ち込んでしまったのです。

それでは、人気を博したいきなり!ステーキが不調になってしまった背景に何があるのかを筆者の見解ではありますが考えてみたいと思います。


お店が増えすぎた


「売上を伸ばすために店舗を増やす」という考えから、実際にいきなり!ステーキは2019年12月末には店舗数が493店舗となり、前年に比べて96店舗も増えました。

しかし、店舗の増加率が24.1%なのに対して、売上高はわずか6%増に留まっているのです。
つまり1店舗あたりの売上金額が下がり、営業利益の減少につながっているのでは?と考えられます。

そもそも複数の飲食店を出店する際は、1商圏につき1店舗にしておくのが基本。
そして、新店を出す際には周辺の競合店調査、年齢層、通行量等を時間帯ごとに細かくリサーチをおこない、時間と人的コストを使って決めていくものです。

ところが、ペッパーフードサービスはこのセオリーを無視した出店を続けてしまいます。

新店を出す方法がなんと、、

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「社長がGoogleマップを見ながら勘で出店していく」というものだったそうです…!
ネットでは「いきなり!出店」なんて、揶揄されている始末でした。

こうした無計画な出店を続けてしまった結果、近辺に何店舗もいきなり!ステーキがあるという事態が発生しました。

たとえば、東京都内には以前「ペッパーランチ錦糸町南口店」と「いきなり!ステーキ錦糸町店」がありましたが、双方の距離はなんと約70メートルという近さだったそうです!

コンビニならわからなくもないですが、この距離感で飲食店の姉妹店があるのは驚きですね。
錦糸町を例に挙げましたが、他にも銀座や新宿、渋谷など多くのエリアに同じケースが当てはまっていました。

このように同じ商圏内に出店してしまうと自店舗間でお客様の取り合いになり、1店舗ごとの収益が低下するのは容易にイメージできるでしょう。
この点において、ペッパーフードサービスは見通しが甘かったと言わざるを得ませんね。


希少性がなくなってしまった


前述に当てはまるかもしれませんが、店舗が増えてしまったことによって、「大きなサイズの厚切りステーキを低価格で食べられるコスパの良さ」がウリのいきなり!ステーキの希少性がなくなってきたのです。

開業当時はまだ「遠くても足を運びたいお店」だったのに、全国津々浦にお店ができてしまったことが要因で「いつでも行けるお店」になってしまったのは、ブランディングの失敗だと言っても過言ではないでしょう。

さらに追い討ちをかけたのが、いきなり!ステーキの営業スタイルを真似たお店を他の飲食企業も増えたことが挙げられます。
つまり、真似たお店が増えたことにより「いきなり!ステーキ行かなくても〇〇でもコスパいいし、わざわざあっちに行かなくてもいいか…」という現象が起きてしまいます。

店舗パッケージを真似されるのは飲食業界問わず、ほかの業界でもよくあることです。
しかし、強いオリジナルのパッケージだったら他に真似されようとビクともしないアイデンティティがあったり、事前に対策をしているものです。

その中で、いきなり!ステーキには強いアイデンティティと事前の対策がなかったのかもしれません…。


人件費率、原価率の高いので利益を確保できなかった


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ペッパーフードサービスが発表している2019年12月期決算説明会資料を見ると、いきなり!ステーキの売上高は前年比約106%となっているので、「あれ?売上は悪くないのでは?」と思ってしまいますよね。

しかし、利益が取れているかどうか売上高の項目からさらに深掘りしたもの、営業利益【売上総利益(売上高-売上原価)から販管費(人件費、広告費、水道光熱費など)を引いたもの】では前年比の約36%に留まってしまいます。
こうして、2019年のペッパーフードサービス全体での純損益は39億円の赤字になったと発表したのです。

2020年度の計画では、いきなりステーキ事業における売り上げ、営業利益ともに前年比90%程度を見込んでいますが、コロナ禍の影響もあり先行きに不透明感がありますね…。


給料・労働環境がいいのに、3年後の離職率が100%

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前述の通り売上は悪くないのに、純損益では赤字…ということは人件費などにかなり割いていることがわかりますね。

実際にペッパーフードサービスの直営店にて店長経験のある方に聞いたところ、お給与はだいたい30万円後半〜40万円くらいだったとおっしゃっており、お休みに関しても月8〜9日は取れていたとそうです(店舗にもよるかもしれませんが)。

これだけ聞くと、ペッパーフードサービスで働いている方々のお給与や労働環境は飲食業界では高水準の位置にあるかと思います。

しかしながら、「就職四季報優良・中堅企業版2020年版」を見ると、いきなりステーキを運営するペッパーフードサービスは、3年後の離職率が100%という驚きの数字になっています。

この要因になっているのは、ブラック企業といわれてしまいそうな企業風土にあるかもしれません。

ペッパーフードサービスの朝礼では、点呼をする決まりになっています。
しかも、社長が満足できるまで繰り返しおこなわなければならないのです。

このような朝礼のやり方は、人によっては軍隊のようだと感じるでしょう。
社長によると、従業員に連帯感を持たせるために必要とのことですが、連帯感を生むための施策が点呼というのは現代のビジネスマンの思考にはマッチするとは言い難いかと思います。

加えて、社内報について感想文を提出させるルールもあります。
こちらも連帯感を持たせるためのようですが、やはりブラック企業にありがちな企業風土です。

人材が定着しない原因のすべてが企業側にあるとはいえないものの、いきなり!ステーキの事例では会社側に大きな問題があるのではないかと思えてなりません…。


理念・オペレーションの落とし込みが間に合わず、サービスのレベルが低くなった

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自社の経営方針を理解して業務に取り組む従業員が増えるほど業績が向上する可能性は高いです。
しかしながら、急激な出店の影響でペッパーフードサービスの企業理念や経営戦略を理解してもらうような人材マネジメントに時間を割く余裕はなくなってしまいました。

新店舗の立ち上げにおいて重要なのは、新規スタッフの確保と教育です。
しかし、新店舗開発を続けるなかで新人教育を担当するスタッフ、つまり店長人材が不足していると、十分な教育時間を設けられないまま開店を迎えなければなりません。

マニュアルが落とし込まれていないレベルの低い店長人材が新人教育を担当してしまうと、新人のレベルアップも見込めず、本来のサービスを提供できないおそれもあるでしょう。

そして、QSC (Quality:品質、Service:サービス、Cleanliness:清潔さ)レベルの向上が肝心なのは言うまでもありません。 飲食店ですから味が美味しいのは当然のことですが、サービスレベルの高さもお客様が感じる味に変化を与えます。
気持ちの良いサービスで提供された商品ほど、見た目にも美味しそうに映りやすいものです。

味が良ければお客様がついてくるという時代もあったかもしれませんが、現代では通用しません。
いきなり!ステーキは、新規出店を急ぐあまり重要なポイントを見逃したのではないでしょうか。

こうしたことにより、新店舗を増やすために新しい人材をどんどん採用していると、人材育成が追いつかなくなる可能性が高いです。


たびたび店舗に貼られた社長直筆の謎の怪文書で炎上


社長の直筆メッセージも売上不調に陥った要因のひとつとして注目されています。

「社長からのお願い」と銘打った張り紙が過去に3回店舗に掲げられましたが、その内容が社長の一方的な主張や上から目線だと感じられ、いわゆる炎上騒動になりました。

たとえば2回目に貼られた社長のメッセージで下記のものがありました。

/////////////
御新規のお客様が硬いステーキを食べられた時、もう二度と来られないばかりか悪い口こみが店を台無しにします。

誠に申し訳なく思います。

一番の人気ステーキを柔らかくて美味しいと言って頂けます様努力してまいります。

大いに反省しております。
///////////////

この表現に反応した世間の声には
「業績悪化の原因はお客さんのせいにしているかのようで非常識だ」
「経営うまく言ってないはわかるけど、みっともない」
などといった、あまりいい評判にはなっていないようでした。

これが来店客数にどのような影響を及ぼしたかは定かではありませんが、少なくとも集客増につながったとは考えにくいでしょう。


度々の値上げと店舗パッケージ・メニューのリニューアル

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飲食店経営を続けていくなかでは、社会情勢の変化に伴いやむを得ず値上げに踏み切ることもあります。

いきなり!ステーキも例外ではなく、これまでに度々値上げをしてきました。
また、店舗パッケージやメニューのリニューアルのタイミングで値上げやシステムの変更がおこなわれてきましたが、これが一部のユーザーに「改悪」だと揶揄されています。

主な変更点は以下の通りです。

・1243円(税込)ワイルドステーキ200gの場合、ランチをセットで頼もうとすると
 1133円+セット220円=1353円(税込)になり、実質110円の値上げ
・一部店舗で土日祝日はランチセットメニューがあったが、土日祝日はランチ撤廃
・ランチタイムは、ライス・サラダ・スープ付きだったが撤廃
・ランチタイムは17時までだったところ、平日15時に変更
・オーダーカットの肉の種類は、トップリブステーキやミドルリブステーキがなくなり、リブロース、ヒレ、サーロインの3種類に削減

ちなみに、オープン当初は300gのワイルドステーキにライス、サラダ、スープがセットになって1,050円だったため、いきなり!ステーキの古参ファンから「メニューの改悪が続いている」といわれるのも頷けるところでしょう。


クレジット・電子マネーの利用範囲縮小

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キャッシュレス決済が一般的になるなかで、飲食店業界でも利用できるクレジットカードや電子マネーを増やしているお店が多い傾向にあります。
お客様の利便性向上は集客につながりやすく、結果的にお店の利益アップにつながるはずです。

ところが、いきなり!ステーキでは利用できるクレジットカードや電子マネーの数が少なくなっているといわれています。

なかでも、JCBが発行するクレジットカードの利用ができなかったという話題がネット上で取り上げられています。
JCBは手数料が高いので経費削減のために契約を解除したなどの噂もありましたが、これは半分本当で半分は間違いです。

噂通りキャッシュレス決済ができない店舗があるのは間違いないものの、利用ができないのはフランチャイズ店舗であり、直営店では利用できます。
とはいえ、ユーザーが混乱しないように、このような噂が広まっている現状に対して積極的なアナウンスをする必要性はあるかもしれません。


肉マネー・肉マイレージの改悪更新

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いきなり!ステーキの利用者にとってお得なサービスのひとつが肉マネーです。
肉マネーとは、チャージによりボーナスポイントがついたり、付与されるボーナスポイントの倍率が上がったりするなどメリットの多い仕組みになっています。

このシステムはリピーター、ファンにとって嬉しいものでした。
しかし、2020年11月には肉マネーのチャージ・販売を終了しており、2021年12月で完全に使用できなくなるとしています。

つまり、2021年の12月までに貯めてた肉マネーを全て使い切らないと、無効になってしまいますよ!ということで、この横暴っぷりに失望したファンは多かったかと思います。

また、いきなりステーキで注目されているもうひとつの仕組みが、肉マイレージランクシステムです。
ホワイトからダイヤモンドまで5段階に分かれており、ランクごとにドリンク無料サービスや500円クーポン券などの特典を受けられます。
そのため、ファンの中にはランクアップのためにお店に通い詰めたりしていました。

ところが、いきなり!ステーキはこの肉マイレージに関しても改悪更新をしたのです。
その改悪更新とは、「一定の期間内にポイントを貯めないとランクダウンする」というものでした。
単純にマイレージポイントは、ただの来店ポイントと化してしまったのです。

これは「お店に来ないとランクが下がっちゃうから、食べに来なさい」というメッセージなので、ある意味お客様に対する脅迫とも言えそうですね。

Yahoo!ショッピングでもこうしたランクシステムがありますが、せっかくポイントを貯めてランクアップしたお客様も、一度ランクダウンしてしまうと二度と足を運ばなくなるかもしれません。

ちなみに、こうしたファンに対する裏切りが続いてしまったことにより、肉マイレージポイントが全国で1位の方がTwitterで「さよなら、いきなりステーキ」と発言したのも当時話題となり、いかにこの改悪がファンの怒りを買ったかが伺えますね。


いきなり!ステーキから学ぶこと


いきなりステーキの売上が不調になった要因を探ったところ、なるべくしてなってしまったという要素がたくさんでてきました。

単純に見ると店舗数の急増が元凶のようなイメージですが、実は別のところにもっと大きな原因があるのではないかと考えられます。

とくに注目したいのが、自分本位の経営でお客様や従業員に目を向けていなかったと捉えられても致し方ない経営スタイルです。

飲食店経営で売上額を増やすには店舗数を増やすのが手っ取り早い施策ですが、それ以前に自社の仕組みが整っていなければいけません。

顧客ニーズを把握したうえでお客様満足度を高める施策、店舗数が増えても従業員が戸惑うことなく働ける仕組みができていれば、店舗数を増やしても対応できたはずです。

市場規模が縮小化してきた国内の飲食市場においては、店舗数の拡大による売り上げ増を考えるよりも、お客様満足度を意識した営業が欠かせません。そのためには、従業員の質の高さを追求するほうがはるかに重要だと言えるでしょう。

そしてなにより、長らく利用してくれていたお客様・ファンの皆様への配慮もなく、利益のためと自分たちの都合で改悪してしまったことも大きいでしょう。

お客様から愛される店舗づくりや、支持してくれていたお客様のことを考えていればこうした考えがあったとしても踏みとどまったはずです。


まとめ

いきなりステーキは高級肉を格安な料金で楽しめるということで一躍人気店に躍り出ました。
キャッチーな店名や立ち食いステーキという斬新なコンセプトも注目される要素です。

一方で、出店数の増加に注力した経営により赤字に転落した事実は、飲食業で働く人たちに大事なことを教えてくれました。

売れる理由がたくさんあっても、戦略的な経営ができていなければ企業の成長は止まってしまいます。
自社の成長ばかりに目を向けるよりも、お客様を笑顔にする施策、自社を強くする仕組みづくりに取り組んだほうが結果的に売り上げと利益を高められるのではないでしょうか。

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著者プロフィール
中学3年生のころに親友の実家がやっている和食店を手伝った経緯から飲食の世界へ。 15歳から和食の世界で技術を磨き、留学の際には和食レストランの二番手も経験。不慮の事故で料理人の道が絶たれてしまうが、飲食の世界で続けていきたく企業のエリア料理長として、各店舗の調理スタッフの指導や採用活動に従事する。今までの経験を活かして飲食に関する記事作成や、料理教室の講師として講演活動も積極的におこなっている。

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